精神科開業のポイント:メリットとデメリットを知る

 

「精神科開業は他の診療科目に比べて設備投資が少なく、比較的少ない資金で始められる」という話は精神科医の先生方ならどなたでも聞いたことがあるかと思います。
しかし、安易に開業へ舵を切ると失敗する恐れもあり、メリットとデメリットを十分理解したうえで準備を進めることが重要です。
そこで本日は、精神科開業のポイントを踏まえた上でのメリットとデメリットについて解説します。

~~そもそも精神科開業が注目される背景~~

精神科医のキャリアは病院勤務、クリニック勤務、行政、企業など多様化しており、精神保健指定医の取得後には「開業」という選択肢も現実的になります。
開業しやすさの背景には、(近年の内装工事費の高騰はあるものの)精神科では高価な医療機器が少なく初期投資を抑えられる点があります。
精神科・心療内科の開業資金は内科など他科よりも低い傾向にあることは確かです。
また、こうしたコスト優位性に加え、うつ病や適応障害、発達障害、認知症など精神疾患の患者数が増え、企業のメンタルヘルス対策や在宅医療の強化により外来精神科のニーズが高まっていることも影響しています。

~~開業のメリット:先生ご自身の医療を形にできる~~

■設備投資の少なさと高収益性
精神科開業の大きな魅力は、上記のように初期投資が少ないからこそ、高い利益率が期待できる点です。
高価な医療機器のリース等が不要なため内装や設備費、ランニングコスト等が抑えられ、クリニックの利益率が高くなります。
その結果、精神科医の平均所得は2,500万円~3,000万円程と全科平均より高いとの統計もあります。

■理念を反映した医療と働き方の自由
勤務医では病院の方針や管理層の決定に従う必要がありますが、開業医は自分の診療理念や専門性を自由に追求できます。
これは開業医ならではの最大のメリットとも言えるのではないでしょうか。
働き方の裁量も大きく、診療時間や休診日を自ら自由に設定できるため、ある意味ワークライフバランスの取りやすさもあります。

■ミニマム開業の魅力
近年は設備やスタッフを最小限にした「ミニマム開業」も注目されています。
固定費と借入額を抑えられ、患者数が安定すれば勤務医並み以上の収入を得ながら小規模で柔軟に運営できる点がメリットです。
小規模であれば人間関係のストレスも少なく、自分の診療理念を反映しやすいのも魅力です。
さらに租税特別措置法第26条に基づく所得控除など税制面の優遇もあります。

~~開業のデメリット:経営責任と資金リスク~~

■経営者としての重責
当然ですが、開業医は経営者としてすべての責任を負います。
さらに運営責任者としての人材確保とスタッフマネジメントを自ら行う必要があり、スタッフの採用が出来ても、当然それで終わりではありません。
働きやすい環境を整えながら、一緒にクリニックを支えていける人材に教育する必要があります。
人材の採用から教育やマネジメントといっても、このあたりはご自身が管理者にならないとなかなか経験できないことであり、開業する上で初めて経験する先生方も多いです。

■収益の上限とワークロードの増大
近年多いミニマム開業はメリットばかりではありません。
ミニマム開業には収益に限界があり、小さなテナントで一人体制の場合、診られる患者数には限度があり、収益が大きく伸びにくいということがあります。
また、院長ご自身ががマルチタスクを担うため、休みが取りにくく、その規模感から将来的に複数医師体制へ移行するのも難しいです。(移転や売却を検討する際には、新天地での患者獲得や再投資が必要になり、二重投資のリスクも生じます。)
さらに長期的には、属人化した運営ゆえに引退時に後継者を見つけにくいことも課題(クリニック売却のハードルが高い)です。

■競合クリニックの存在と集患
近年、特に都市部の駅前には当たり前のようにメンタルクリニックがあります。
クリニックを開業したら自然に患者さんが集まる、ということは基本ありませんので、戦略が必要不可欠です。
特に競合の多いエリアでは差別化が重要であり、立地やWEBや広告戦略を誤ると患者が集まらず、固定費が経営を圧迫します。

~~開業成功のポイント:準備と差別化~~
(ここでは2つを紹介します)

■専門家の活用と長期計画
開業はクリニック勤務の経験は少なくともあった方が良いです。
雇われ院長などの管理職の経験があった方が良いという意見もありますが、個人的にはオーナー(経営者)と雇われ院長とでは、全く視点や景色が違う為、雇われ院長職の経験はそれほど重要だとは思いません。
また特措法終了の不確定要素や競合動向を見据えながら、将来的には二診体制や譲渡も視野に入れた資金計画と地域ニーズ分析が必要です。
資金調達や事業計画の作成、行政手続きなどは専門家の支援を受けることでミスや抜け漏れを防げます。
また、ミニマム開業には将来の売却が難しいというデメリットもあるため、長期的な視点でライフプランを考え、ご自身の価値観に合った規模や運営方法を選ぶことが大切です。

■マーケティング戦略
精神科クリニックはWebマーケティングが有効で、ホームページで理念や診療内容を分かりやすく発信することが集患につながります。
SNSでの発信も効果的です。(クリニックアカウントではなく院長の個人アカウントがお勧めです。)
また企業の産業医や顧問契約、訪問診療など複数の診療サービスを組み合わせることで収益源を拡大することも可能です。
地域のニーズを深掘りしながら自院の強みを明確にし、それをホームページやSNSを活用しながら発信し、さらには地域連携や企業連携も視野に入れて戦略を立てることが重要なのです。

~~最後に~~

精神科開業には、初期投資の低さや高収益性、理念を反映した医療の実現など多くのメリットがあります。
一方で、競合クリニックが多いからこその集患の難しさなどのデメリットも存在します。
開業後に成功するためには、物件選定から内装・採用・マーケティングまで細部に目を配る必要があり、これらの開業の準備段階が非常に重要です。

私どもリノゲートは、精神科医の先生方の長期的なキャリア設計と開業に向けた戦略を立てるご支援(開業後の成功に軸を置いたご支援)をさせていただいております。
今後開業をお考えの先生がおりましたら、以下よりお気軽にご相談ください。