メンタルクリニックの院長先生が譲渡を検討する背景には、年齢や体力の衰え、体調不良、後継者不在、経営や管理業務の問題などさまざまな理由があります。
長年通っている患者さんやスタッフの雇用を守りたいという責任感から、閉院ではなく承継を選ぶ院長も多く、譲渡は単なる経営権の移転ではなく、理念や診療を次世代につなぐ大切なプロセスです。
■譲渡を検討する際の課題と譲渡事例
患者さんやスタッフに愛着があるため閉院は避けたいものの、冒頭で挙げた理由などから、自院の売却を選択する院長先生は増えています。(また最近の傾向として、問題が表面化してからでは遅い為、直ぐの譲渡ではなくても「相談しておく」「市場観を知っておく」というお考えからご相談にいらっしゃる院長先生方もおられます)
そのような中、譲渡の際には「患者さんの通院が途切れないか」「スタッフが継続勤務するか」「日々の診療が再現可能か」といった無形資産を可視化する必要があり、この点を疎かにするとクリニックの価値が大きく損なわれます。
ここでは過去の譲渡事例を一部紹介します。
~~事例①:閉院予定から逆転した郊外クリニック~~
首都圏郊外のあるメンタルクリニックは開業から20年、駅から徒歩2~3分という好立地にありましたが、院長先生には後継者がおらず、自院のような個人クリニックは譲渡できないと誤解して閉院の告知まで行っていました。
しかし私どもに相談したところ、譲渡は可能であることが分かり、急遽後継者探しを開始しました。
閉院を知らせていたため売上が減少傾向にありましたが、売主の懸念点と条件を整理し速やかに募集を開始した結果、複数の候補先から問い合わせが寄せられ、ご相談から約5カ月で成約となりました。
決め手は、買手が院長の診療方針や患者への思いを理解し、引き継ぎ後も理念を踏襲しつつ自身の経営理念と組み合わせる姿勢を示したことでした。
これは、閉院告知後でも早急に正しい手順で動けば価値ある承継が可能という事例です。
~~事例②:価値観の一致で実現した都心クリニックの承継~~
東京都23区内で20年以上地域医療に貢献してきたメンタルクリニックの院長は、70代に差しかかり体調面の不安(長年の持病あり)を理由に後継者探しを開始しました。
クリニックは駅前という好立地に加え、1日50名程の安定した外来数と高い地域浸透度を持つ一方、建物の老朽化やスタッフの高齢化など課題も抱えていました。
そのような中、買い手探しには約1年ほどを要しましたが、売主と買主の診療理念と専門領域が近接し、院長の築いた地域医療の価値を尊重したいという買主の思いが一致したことが成約の決め手となりました。
テナントオーナーも医療継続を支持し賃料上昇を抑えたことや、譲渡価格を抑えた売主の配慮もスムーズな承継を後押しした事例です。
■譲渡の基本プロセス
精神科クリニックの売却は院長先生の高齢化や後継者不在、経営負担を背景に増加傾向にあります。
売却までの一般的なプロセスは、事前準備→専門家への相談→買い手の選定→デューデリジェンス→契約締結→引き継ぎの6ステップで進み、財務諸表や労務資料の整理、患者情報の引き継ぎなど事前準備が重要です。
専門の仲介会社や弁護士に相談することで、適正な価格算定や法的手続きをスムーズに進めることが可能です。
■成功のポイント
<無形資産の可視化と理念の共有>
譲渡では患者さんの通院継続、スタッフの雇用維持など無形資産の可視化が重要であり、引き継ぎ期間中に旧院長と新院長が共同で説明会を開くなど丁寧なコミュニケーションが不安解消につながります。
また売手である院長先生は「譲渡したから終わり」というお考えよりも、これまで我が子のように育ててきたクリニックが譲渡後もどうなっていくのかは気になるところです。
よって買手と売手の診療理念や専門性が近いことも成功の鍵となり、医療の質と地域貢献を維持できる相手を選ぶことが大切です。
<早期相談とタイミング>
閉院告知後でも迅速な対応により価値ある譲渡が可能ですが、早期に専門家へ相談し後継者探しを始めるほど選択肢が広がります。
また、相手が見つかるまでにはケースによって数ヶ月から1年程度かかることもあるため、時間に余裕を持ったスケジュールで計画することが望ましいです。
<デジタル活用と集患戦略>
譲渡後は既存患者の引き継ぎだけでなく、新規患者の獲得も課題になります。
ホームページがなかったり長年更新が滞っていた場合には、疾患に関するコラムや医師紹介などコンテンツを充実させ、信頼を可視化することが効果的です。
オンライン診療やSNS活用などデジタル施策を組み合わせると、若い世代や遠方の患者へのアクセス向上が期待できます。
最後に、
上記のようなメンタルクリニックの譲渡事例からは、単なる売買ではなく、既存の患者さんを丁寧に引継ぐという地域医療を守るためのバトンパスであることがよく分かります。
後継者不在や経営者の体力的限界から譲渡を検討する院長は多いものの、理念や診療スタイルを共有できる買い手を見つけ、患者さん・スタッフの不安を丁寧に解消することが成功の鍵です。
財務資料の整理や専門家への相談、デジタル活用といった準備を早めに行い、時間的余裕を持って計画することで、クリニックの価値を最大限に残した譲渡が実現します。
私どもリノゲートはメンタルクリニック専門で譲渡支援をしております。
今譲渡をお考えではなくても「将来に備えたい」という院長先生がおられましたらお気軽にご相談ください。
