「ミニマム開業」とは、設備投資やスタッフを最小限に抑えた小規模開業のことですが、私どもリノゲートが精神科医である先生方の開業支援をさせていただく中で、過去にミニマム開業についてのご相談を頂くケースは少なくありません。
精神科は高額な機器が不要なため開業資金が他科より少なく済み、テナントと内装、設備などを合わせても一般的な開業より低コストで始められます。
先生方に置かれましても、開業における最も不安な要素に経営面、資金面(主にイニシャルコスト、ランニングコスト)を挙げる先生方は多いです。
よってそのような先生方におかれましては、リスクが少なく始められるミニマム開業が最も良い開業手段と考えがちです。
では果たしてミニマム開業が先生にとって最も適した開業手段なのか?
<ミニマム開業のメリット>
まずメリットは分かりやすいです。
設備と人員を絞り込めば固定費が抑えられ、借入額も少なくなります。
患者数が安定すれば、勤務医並み、もしくはそれ以上の収入を確保しつつ自分のペースで診療を組み立てることも可能です。
小規模であれば人間関係のストレスが少なく、診療理念を反映しやすい点も魅力です。
さらに租税特別措置法の第26条(特措法)の優遇税制もあります。
これらのメリットだけを見れば、ミニマム開業が成功しやいモデルであるという事は明らかです。
<ミニマム開業のデメリットとリスク>
一方で、一部のデメリットやリスクは見えていない先生方もおられます。
まず収益に明確な限界があり、小さなテナントと一人体制では診られる患者数に上限があり、収益は大きく伸びません。
また院長である先生自身にマルチタスクが求められ、採血、レセプト作業、備品管理なども担う可能性がある為、診療以外の仕事に時間を取られることも多いです。(医師は医師しかできない仕事に専念した方が良いという経営的な視点や意見も多い)
収益が上がってきて、経営が安定した後、さらには収益が見込めそうなタイミングで移転をお考えの先生もおられますが、移転先エリアの距離によっては当然市場状況(競合や患者層、人口等)が変動する為、移転前の収益以上が見込める保証はありません。また内装費などは初期開業時含め、二重で掛かってきます。
ちなみにミニマム開業はQOLが上がるという声を聴いたり、そのような記事を拝見することもありますが、クリニックの運営は先生お一人に全て掛かってきますので、むしろお休みが取りにくかったり、規模的に非常勤や将来的に常勤の先生方を入れて複数診体制にするという所謂「任せる運営」ということが難しくなります。
さらに、先生ご自身がいつかは引退をするタイミングがやってきます。その際に属人化しているだけに、クリニックを売却するにしても買い手を見つけるハードルがかなり上がります。(お一人でやってきた院長ご自身が引退してしまっては、クリニックの収益ダウンが明らかな為)
ミニマム開業は手段としては良いと思います。
「開業=不安」というお考えからミニマム開業に舵を切られる先生のお気持ちもよくわかります。
ただ自分に都合の良い事だけを見つめて、目先の事ばかりを考えるのではなく、時として長い目でご自身の医師人生で考える事も必要です。
短期的な合理は長期的には非合理であるケースは多いです。
先生によって当然ながら人生観は違います。
「自身がどのような働き方を望むのか、将来的に人員や診察室を増やす予定があるのか、売却まで考えるのか」こうした視点から開業の際は是非慎重にご判断いただきたいと思います。
昨今「ミニマム開業」関する良い記事ばかりがネット上にはありますので、冷静な判断を下すには一度中立的な立場に立ち、そこからの視点での検討も必要です(ミニマム開業に対する否定的な考えはありません)。そういった意味で本日は上記を共有させていただきました。
少しでも先生方の参考にしていただけるのであれば幸いです。
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