「譲る」は終わりではなく、診療や院長先生の想いを繋ぐメンタルクリニック 譲渡・承継

 

院長先生が「メンタルクリニックの譲渡・承継」を口にされる時、動機は一つではありません。
体力の限界、家族介護、経営的な問題、分院化の計画 等、理由は違っても、共通してあるのは「患者さんとスタッフを守りたい」という責任感です。

今回は、実際に譲渡を決意した院長先生の実例をご紹介します。

1.「辞め時」を決めた背景と院長先生の心境
とある院長(以下、A院長)は、オンライン診療やマイナンバーカード導入など医療環境が急速に変わる中で「変えようという意欲が湧かなくなった」「気持ちが萎えてきた」とお話をされており、これが引退を考えるきっかけになったようです。
実際に譲渡の相談は「体力や気力の衰え」「システムの変化への対応疲れ」など、身近なところから始まるケースは多いです。
児童精神科クリニックを営んでいたA院長も、70歳近くになり「根気が続かなくなった」こと、ゆっくりした時間を持ちたいという気持ちも上記のことがきっかけでさらに出てきたようです。そして譲渡を決意されました。

2. 患者さんとスタッフへの責任感
A院長には「患者さんとスタッフを守りたい」という想いがありました。
ご相談を頂いた際には、児童精神科クリニックとして「子どもたちが入りやすく抵抗の少ないメンタルクリニック」を目指して内装や設計、クリニック運営に工夫を重ねたと仰っていました。
承継をするケースでは、後継者が売上や数字しか見ず、そうした思いに共感してくれないケースもある為、私共は「売上だけでなく無形資産的なところも含めたバトンを繋ぐことが院長の強いお気持ちだ」という事を強調します。
特に患者さんがどうなるかを心配する思いは当然あり、A院長だからこそ通っていた患者さんが交代後に何割かは離れてしまうというケースもあります。
この離脱を防ぐには、譲渡側と譲受側が一緒に診察する引き継ぎ期間を設け、カルテに書かれていない生活背景まで共有することが重要です。
長年培ってきた患者さんやスタッフとの信頼関係も引き継ぐべきと私共は考えています。

3. スタッフへの伝え方と不安解消
実際のA院長からのご相談では「従業員にいつ・どう伝えるべきか」という話にもなりました。
事業承継の計画がある程度固まるまでトップ同士でやり取りするのが一般的ですが、スタッフは「自分の雇用はどうなるのか」「新しい院長はどんな人か」という不安を抱えています。
この不安を長期間放置すると、秘密裏に退職活動を始めたり、患者に噂が広まるなど良くない影響が出る為、承継先が決まり次第、時間をかけて丁寧な説明をすることが大切です。
スタッフへの説明では、事業承継のスケジュールや後継院長の人物像、今後の就業に関する情報を順序立てて伝えます。
さらに、スタッフの就業意思や不安を事前面談で把握しておくことが、円滑な承継には欠かせません。

4. 譲渡は“終わり”ではなくバトンパス
長年院長先生の想いを注ぎ込んできたクリニックには特別な想いがあると思います。
そんなクリニックを第三者に引き継ぐ選択肢に対して「良い印象はない」と仰る院長先生も中にはいますが、廃業ではなく、クリニックを残していくという選択であればいつかはこの時がやってきます。
重要なのは、引き継ぐ側が患者さん・スタッフ・地域への配慮を理解し、院長の思いを尊重してくれるかどうかです。
譲渡は終わりではなく、院長が引退後も患者や地域を支える仕組みを作ることこそ、譲渡の本質であり、それがそのクリニックが続く“バトンパス”ということになります。

メンタルクリニックの譲渡・承継は、単なる経営の引き継ぎではありません。
院長先生ご自身の健康や意欲の問題、患者さん・スタッフへの責任感、無形資産への共感といった 複数の想い が交錯する決断です。
実際のご相談では、スタッフへの伝え方や不安解消、患者離脱を防ぐための引き継ぎ期間など、細やかな配慮が求められます。
譲渡は終わりではなく、院長が築いてきた診療の価値を次世代へのバトンパスです。院長先生の想いを尊重し、患者さんやスタッフが安心できる形で次の方に繋ぐことが何よりも重要です。

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